「死亡保険の金額をいくらにするか」と聞かれても、正直ピンとこない。
シミュレーターを使えば数字は出てくる。でも、その金額が本当に必要なのか、多すぎるのか少なすぎるのか、自分では判断がつかない。「万が一のとき、家族が困らない金額」と言われても、何をもって「困らない」とするのかも曖昧だ。
保険の担当者に聞けば「この金額が必要です」と答えてくれるかもしれない。でも、それが本当に自分の家族に合った金額なのか、それとも保険を売るための金額なのか、見分ける自信もない。
かといって、適当に決めるわけにもいかない。高すぎれば毎月の保険料が負担になるし、低すぎれば意味がない。どこかに「ちょうどいい決め方」があるはずなのに、それが何なのか分からない。
そんな状態で、金額を決めようとしている。
「必要保障額」という考え方があること

死亡保険の金額を決めるとき、保険業界では「必要保障額」という言葉が使われる。
これは「万が一のときに、遺された家族が生活を続けるために必要なお金」を指す。ただし、この言葉自体が抽象的で、具体的に何を指すのかは人によって解釈が分かれる。
一般的には、以下のような要素を考慮して計算される。
- 遺族の生活費(何年分必要か)
- 子どもの教育費
- 住宅ローンの残債
- 葬儀費用やその他の整理資金
一方で、すでに持っている資産や、遺族年金などの公的保障も考慮される。
「必要な金額 − すでにあるお金 = 保険で準備する金額」という考え方だ。
この計算式自体は理にかなっている。ただ、実際に自分で計算しようとすると、途端に曖昧になる。
計算してみても「これで合っているのか」が分からない
必要保障額を計算するためのシミュレーターは、保険会社のサイトや比較する際の視点サイトにいくつも用意されている。
入力する項目は、だいたい以下のようなものだ。
- 現在の年齢と配偶者の年齢
- 子どもの人数と年齢
- 現在の年収
- 住宅ローンの残債
- 現在の貯蓄額
これらを入力すると、3,000万円とか5,000万円といった数字が表示される。
でも、この数字を見ても「本当にこれでいいのか」という疑問は残る。
なぜなら、シミュレーターが前提としている「生活費」や「教育費」は、あくまで平均値だからだ。自分の家族が実際にどれくらいのお金を使って生活するのか、それは平均とは違うかもしれない。
また、シミュレーターは「遺族年金がいくらもらえるか」も自動で計算してくれる。でも、その金額が本当に正しいのか、自分で確認する手段を持っていない人も多い。
計算結果は出る。でも、それが自分に合っているかどうかは、結局のところ分からない。
「平均」を参考にする人もいる

自分で計算するのが難しいとき、他の人がどうしているかを参考にする方法もある。
生命保険文化センターの調査によると、死亡保険金額の平均は約2,000万円前後とされている(世帯主の場合)。ただし、これはあくまで平均であり、年齢や家族構成によって大きく変わる。
たとえば、30代で小さい子どもがいる世帯では3,000万円以上に設定している人も多い。一方、50代で子どもが独立している世帯では1,000万円程度に抑えている人もいる。
平均を知ることで「だいたいこれくらいなんだ」という感覚は持てる。ただ、それが自分に当てはまるかどうかは別の話だ。
平均値はあくまで「参考」であり、自分の状況と照らし合わせる必要がある。同じ年齢でも、住宅ローンの有無や配偶者の収入状況によって必要な金額は変わる。
「多めに入っておけば安心」とも限らない
「少ないよりは多い方がいい」と考えて、保険金額を高めに設定する人もいる。
確かに、万が一のときに遺された家族が経済的に困らないようにするのが死亡保険の役割だ。だから、多めに入っておくこと自体は間違いではない。
ただし、保険金額が高くなれば、当然ながら毎月の保険料も高くなる。
たとえば、30歳男性が3,000万円の定期保険に入る場合と5,000万円の定期保険に入る場合では、月々の保険料に数千円の差が出ることもある。
年間で考えると数万円、10年では数十万円の違いになる。
もし、その保険料が家計を圧迫して、今の生活が苦しくなるなら、それは「安心」とは言えない。
保険は「万が一のため」のものだが、万が一が起きる確率よりも、今の生活が続く確率の方が圧倒的に高い。その「今」を犠牲にしてまで、保険金額を高くする必要があるかどうかは、慎重に考える必要がある。
「段階的に見直す」という選択肢もある

死亡保険の金額は、一度決めたら変えられないわけではない。
むしろ、ライフステージに応じて見直すのが自然だと考える人も多い。
たとえば、子どもが生まれたばかりの頃は教育費や生活費を考えて3,000万円に設定していたとしても、子どもが独立した後は1,000万円程度に減らす、といった調整ができる。
実際、定期保険であれば、契約期間が終わるタイミングで金額を見直すことができる。終身保険でも、途中で減額することは可能だ(ただし、減額すると解約返戻金が減る場合がある)。
「今の状況で必要な金額」を基準に考え、状況が変わったら見直すという前提で決めるのも、一つの方法だ。
最初から完璧な金額を決めようとすると、どうしても迷いが大きくなる。でも、「とりあえず今の状況に合わせて決めて、必要なら後で変える」と考えれば、少しは決めやすくなるかもしれない。
「自分では決められない」と感じることも普通
ここまで読んでも、やはり「自分では決められない」と感じる人もいる。
それは当然のことだ。
死亡保険の金額を決めるには、遺族年金の仕組みや、将来の生活費の見積もり、さらには自分の資産状況など、複数の要素を総合的に判断する必要がある。
専門的な知識がなければ、どこをどう考えればいいのかすら分からない。
そんなとき、誰かに相談してみることも選択肢の一つだ。
ただし、相談する相手が「保険を売ること」を目的にしていると、どうしても高めの金額を勧められる可能性がある。だから、相談するなら「中立的な立場で話を聞いてくれる人」を選ぶことが大切だ。
FP(ファイナンシャルプランナー)や保険の無料相談窓口では、複数の保険会社の商品を比較する際の視点しながら、自分の状況に合った金額を一緒に考えてくれる場合がある。ただし、最終的に決めるのは自分自身であることを忘れないようにしたい。
「決め方」は一つではない

死亡保険の金額を決める方法は、一つではない。
シミュレーターを使う人もいれば、平均を参考にする人もいる。専門家に相談して決める人もいれば、とりあえず最低限の金額で入っておいて、後から見直す人もいる。
どの方法が正しいということはない。
大切なのは、「自分が納得できる形で決めること」だ。
納得できないまま契約しても、後から「本当にこれで良かったのか」と悩み続けることになる。逆に、たとえ金額が平均より低くても、自分で考えて決めたのであれば、それは自分にとっての正解だ。
- 死亡保険の金額は「必要保障額」という考え方で計算されるが、自分で判断するのは難しい
- シミュレーターや平均値は参考になるが、それが自分に合っているかは別問題
- 多めに入れば安心だが、保険料が家計を圧迫するなら本末転倒
- ライフステージに応じて見直すことも可能
- 自分で決められない場合、中立的な立場の専門家に相談する方法もある
金額を決めることに正解はない。だから、焦って決める必要もない。
自分のペースで、納得できる形を探していけばいい。
最終判断はご自身の状況に合わせて行い、不安がある場合は公的機関や有資格者へご相談ください。