住宅ローンを組むとき、「団体信用生命保険に加入していただきます」と説明された。
「団信」という略称で呼ばれることもあるこの保険。名前からして何かの保険だということは分かる。でも、それが何を保障してくれるのか、本当に必要なのか、入らないという選択肢はあるのか。
説明を聞いても、専門用語が多くてピンとこない。「万が一のときに」と言われても、その「万が一」が具体的にどういう状況なのかも曖昧なまま。
調べようとしても、保険会社のサイトは専門的すぎるし、住宅ローンの情報サイトは「加入が必須とされることが多い」と書いていることが多い。
何となく大事なものだということは分かる。でも、何が大事なのか、自分にとってどういう意味があるのかが見えてこない。そういう状態で判断を求められても、困る。
団体信用生命保険は「ローンが消える保険」

団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの契約者が亡くなったり、高度障害状態になったりしたときに、残っている住宅ローンの残高がゼロになる保険です。
一般的な生命保険との違いは、保険金の受取人が「家族」ではなく「金融機関」である点。契約者に万が一のことがあったとき、保険会社が金融機関に保険金を支払い、その金額でローンが完済される仕組みです。
結果として、残された家族は住宅ローンの返済義務から解放されます。家はそのまま残り、月々の返済もなくなる。これが団信の基本的な役割です。
保険料は金利に含まれている
団信の保険料は、多くの場合、住宅ローンの金利に含まれています。
たとえば「金利1.5%(団信込み)」という表示であれば、その中に団信の保険料も入っているということ。別途、保険料を支払う必要がないケースが一般的です。
フラット35など一部の住宅ローンでは、団信が任意加入で、加入する場合は金利に0.2%程度が上乗せされる形式もあります。この場合、加入しないという選択も可能です。
保障される「万が一」の範囲
団信が保障する「万が一」は、商品によって異なります。
基本的な団信が保障するのは以下の2つです:
– 死亡
– 高度障害状態(両目の視力を完全に失った、両手両足を失った、など重度の障害)
特約付き団信では、さらに以下のような保障が追加される場合があります:
– がん診断(がんと診断されたらローン残高がゼロになる)
– 三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)
– 八大疾病(三大疾病+高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎)
– 就業不能状態(働けない状態が一定期間続いた場合)
特約を付けると、その分金利が0.1〜0.3%程度上乗せされるのが一般的です。
「入らない」という選択肢はあるのか
団信への加入は、多くの民間金融機関では住宅ローン契約の条件とされています。
つまり、団信に加入できない場合、その金融機関では住宅ローンを組めないことが多いということ。健康状態などの理由で団信に加入できない人は、別の選択肢を探す必要があります。
フラット35という選択肢
住宅金融支援機構のフラット35では、団信の加入は任意です。
加入しない場合、金利が0.2%低くなります。3,000万円を35年で借りる場合、総返済額で約120万円の差になる計算です。
ただし、団信に加入しない場合、契約者に万が一のことがあったとき、住宅ローンの返済義務が残るという点があります。家族が返済を続けるか、家を売却して返済するか、いずれかの対応が必要になる可能性があります。
団信に加入しない場合、契約者に万が一のことがあったときも返済義務が残ります。家族への負担がどうなるかは、各家庭の状況によって異なります。
健康状態で加入できない場合
団信は生命保険の一種なので、加入時には健康状態の告知が必要です。
持病や既往症がある場合、通常の団信には加入できないことがあります。そうした場合の選択肢として:
- ワイド団信(引受基準緩和型)を利用する
- フラット35で団信なしで借りる
- 別の生命保険で備える
ワイド団信は、通常の団信よりも加入条件が緩和されていますが、金利が0.3%程度上乗せされます。
「特約」をどう考えるか

がん団信や三大疾病特約など、基本の団信に特約を付けるかどうか。これも判断に迷う部分です。
国立がん研究センターのデータによると、生涯でがんと診断される確率は男性で65%、女性で51%。働き盛りの世代でも、がんと診断される人は少なくありません。
特約を付ければ、がんと診断された時点で住宅ローンがゼロになります。月々の返済がなくなれば、治療に専念できるという考え方もあります。
金利上乗せの影響
ただし、特約には金利上乗せが伴います。
たとえば、がん団信で金利が0.2%上がる場合、3,000万円を35年で借りると、総返済額は約120万円増えます。
この120万円を35年間で割ると、年間約3.4万円。月々3,000円弱の保険料を払っていることになります。
同じ保障内容の民間のがん保険と比較する際、どちらが自分の状況に合うかは人によって異なります。すでに別のがん保険に入っている場合、重複する保障をどう整理するか。そうした視点で見ることもできます。
- すでに加入している保険との重複はないか
- 金利上乗せ分を民間保険の保険料と比較してみたか
- 保障の条件(がんの種類、就業不能の定義など)は理解しているか
すでに生命保険に入っている場合
住宅ローンを組む前から、生命保険に入っている人も多いでしょう。
その場合、団信と既存の生命保険で、保障が重複することになります。団信でローンがなくなるなら、既存の生命保険の死亡保障額を減らすという考え方もあります。
保障の整理という視点
たとえば、死亡保障3,000万円の生命保険に入っていて、3,000万円の住宅ローンを組んだ場合。
団信に加入すれば、万が一のときに住宅ローンはゼロになります。その分、生命保険の死亡保障額を減らせば、保険料も下がる可能性があります。
ただし、団信は住宅ローンの残高に応じて保障額が減っていきます。ローンを返済するにつれて、保障される金額も少なくなる。一方、生命保険は契約した保障額が変わらない商品が多い。
どちらを残し、どちらを減らすか。それは、家族構成や収入状況、将来の計画によって変わります。
住宅ローン残高に応じた保障が得られ、ローン返済に伴い保障額が減少
住宅ローンの返済に限定された保障で、他の目的には使えない
団信に入れなかったらどうなるか

健康状態などの理由で団信に加入できず、民間金融機関の住宅ローンが組めない。そうなったとき、選択肢がまったくないわけではありません。
フラット35+別の生命保険
フラット35で団信なしで借り、別途、生命保険に加入する方法があります。
ただし、団信に入れないということは、通常の生命保険にも入りにくい可能性があります。持病があっても入れる「引受基準緩和型」や「無選択型」の生命保険もありますが、保険料は割高になる傾向があります。
配偶者を主契約者にする
もう一つの方法は、健康状態に問題のない配偶者を住宅ローンの主契約者にすること。
収入や雇用形態の条件を満たせば、配偶者名義でローンを組み、配偶者が団信に加入する形も可能です。ただし、この場合、配偶者に万が一のことがあったときにローンがゼロになりますが、自分に何かあったときは保障されないという点があります。
「よく分からないまま」でも、それは普通のこと
団体信用生命保険について調べても、結局よく分からない。どの選択肢が自分に合っているのか、判断がつかない。
そういう状態は、特別なことではありません。
住宅ローンを組む人の多くが、団信について「何となく分かったような気がする」程度の理解で契約しています。専門家でもない限り、すべてを完璧に理解して判断することは難しい。
分からないまま進むのが不安なら、金融機関の担当者に「もう一度説明してほしい」と伝えてもいい。何度聞いても構わない。
特約を付けるかどうか、その場で決める必要はない。一度持ち帰って、家族と話してから決めてもいい。
完璧に理解できなくても大丈夫です。判断は本審査後でも間に合い、何度でも見直せます。ご自身のペースで整理していくことができます。
団信は、住宅ローンを組む上で避けて通れない部分です。でも、それは「すぐに決めなければいけない」ということではありません。
自分の状況を整理して、分からないことを確認して、それから判断する。その順番で進んでも、遅くはありません。