「介護保険の申請って、いつどうやればいいんだろう」
そう思いながら、日々の介護や仕事に追われて、結局何もできないまま数ヶ月が過ぎている。調べようとは思うけれど、役所のホームページは文字が多くて読む気になれない。電話をかけようにも、何を聞けばいいのかもよくわからない。
申請が遅れると損をするのか、それとも急がなくても大丈夫なのか。そもそも自分の親は申請できる状態なのか。わからないことだらけで、動き出せないまま時間だけが過ぎていく。
こういう状態は、決して珍しいことではありません。介護保険の申請を考えている人の多くが、同じように「何から手をつければいいかわからない」という状態から始まります。
介護保険の申請は「必要になったとき」で間に合う

介護保険の申請は、必要になってから動き出しても間に合う場合が多いです。
「もっと早く申請しておけばよかった」と感じる人もいますが、それは申請のタイミングが遅かったからではなく、申請してから認定結果が出るまでに約1ヶ月かかることを知らなかったケースが見られます。
つまり、「必要になる少し前」に申請できればベストですが、必要になってから申請しても、サービスは遡って利用できる仕組みがあります。
申請→訪問調査(約1週間後)→認定審査(約3週間後)→結果通知
合計で約1ヶ月が目安とされています。
「申請が遅れたせいでサービスが受けられなくなる」ということは基本的にありません。ただ、認定結果が出るまでの間は自己負担でサービスを利用することになる可能性があるため、「そろそろ必要かもしれない」と感じたときが、申請を考えるタイミングの一つと言えます。
申請に必要なのは「申請書」と「保険証」だけ
介護保険の申請は、思っているよりもシンプルな場合が多いです。
必要なものは基本的に2つ。
- 介護保険被保険者証(65歳以上の人には自動的に送られてきます)
- 申請書(市区町村の窓口でもらえます)
申請書は市区町村のホームページからダウンロードできる場合もありますが、窓口で直接もらって、その場で書き方を教えてもらうこともできます。
「何を書けばいいかわからない」という不安があるなら、空欄のまま窓口に行って、担当者に聞きながら記入する方法もあります。実際、そうしている人は少なくありません。
申請書に書く内容は、住所・氏名・生年月日・連絡先といった基本情報と、「どんな状態で困っているか」を簡単に記入する欄があるだけです。医学的な診断名を正確に書く必要はなく、「歩くのが不安定になった」「トイレに時間がかかるようになった」といった日常の変化を書けば十分な場合が多いです。
申請後に行われる「訪問調査」は日常の様子を見るだけ

申請が受理されると、約1週間後に市区町村の職員や委託を受けた調査員が自宅を訪問します。
この訪問調査を「試験のようなもの」だと思って緊張する人もいますが、調査員が見ているのは「普段の生活の様子」です。
「できないふりをしないと認定されない」と考える人もいますが、無理に演技をする必要はありません。調査員は日常の状態を知りたいだけで、できることとできないことの両方を見ています。
訪問調査では、以下のような質問をされることがあります。
- 食事は自分で食べられるか
- トイレは一人で行けるか
- お風呂は一人で入れるか
- 歩くときに支えが必要か
- 薬の管理はできているか
これらの質問に対して、「できる」「少し手助けが必要」「できない」といった形で答えていくだけです。所要時間は30分〜1時間程度です。
調査員は敵ではなく、状態を正確に把握して適切なサービスにつなげるための味方です。普段困っていることを、そのまま伝えれば十分です。
認定結果は「要支援1・2」「要介護1〜5」の7段階
訪問調査の結果と主治医の意見書をもとに、認定審査会で介護の必要度が判定されます。
結果は以下の7段階に分かれます。
- 要支援1・2:日常生活はほぼ自立しているが、一部支援が必要
- 要介護1・2:日常生活に部分的な介助が必要
- 要介護3〜5:日常生活の多くの場面で介助が必要
認定結果によって、利用できるサービスの種類や支給限度額が変わります。
たとえば、要支援1の場合は月額約50,000円分、要介護5の場合は月額約360,000円分のサービスを、1割負担(所得によっては2割または3割)で利用できる仕組みになっています。
「思ったより軽い認定だった」と感じる人もいますが、認定は「今の状態」を反映したものであり、状態が変われば再申請や区分変更の申請ができます。一度の結果がずっと続くわけではありません。
認定結果が出たら、ケアマネジャーを決める

認定結果が届いたら、次に行うのはケアマネジャー(介護支援専門員)を決めることです。
ケアマネジャーは、どのサービスをどのように利用するかを一緒に考え、ケアプラン(介護サービス計画)を作成してくれる人です。
ケアマネジャーは、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に所属しています。どこに依頼すればいいかわからない場合は、認定結果と一緒に送られてくる書類に事業所の一覧が載っていることが多いです。
また、市区町村の窓口に相談すれば、近くの事業所を紹介してもらうこともできます。
ケアマネジャーを決めたら、自宅に来てもらって、生活の状況や困っていることを話します。その内容をもとに、ケアマネジャーがケアプランを作成し、サービス事業者との調整を行ってくれます。
ケアマネジャーへの相談やケアプラン作成は、全額介護保険から支払われるため自己負担はありません。
「ケアマネジャーと合わなかったらどうしよう」と心配する人もいますが、変更することも可能です。最初から完璧な相性を求める必要はありません。
申請は家族や地域包括支援センターが代行できる
「本人が動けない状態なのに、どうやって申請すればいいのか」と悩む人もいます。
介護保険の申請は、本人以外でも代行できます。
- 家族が代わりに申請する
- 地域包括支援センターに代行を依頼する
- 居宅介護支援事業所に依頼する
地域包括支援センターは、市区町村が設置している高齢者の総合相談窓口です。介護保険の申請代行だけでなく、「どんなサービスが使えるか」「どこに相談すればいいか」といった相談にも乗ってくれます。
電話一本で相談できるので、「何から始めればいいかわからない」という状態なら、まず地域包括支援センターに連絡してみる方法もあります。
申請を「まだ早い」と思う気持ちも、「もう遅い」と思う気持ちも、どちらも自然なこと

介護保険の申請を考えるとき、多くの人が「まだ大丈夫かもしれない」と思う一方で、「もう手遅れかもしれない」とも感じます。
この両方の気持ちが同時に存在するのは、おかしなことではありません。
申請は「介護が必要になった瞬間」を明確に決めるものではなく、「少し支えがあれば、今の生活を続けられるかもしれない」と思ったときに考える選択肢の一つです。
申請したからといって、すぐにサービスを使わなければいけないわけでもありません。認定を受けた後、しばらく様子を見てから利用を始める人もいます。
「申請すること」と「サービスを使うこと」は別の行動です。ご自身のペースで考えていい部分です。
何も決めないままが不安なら、まず情報を整理するだけでもいい。話を聞くことと加入は別である。そう考えると、少し気持ちが楽になるかもしれません。
- 介護保険の申請は「必要になったとき」で間に合う場合が多い
- 申請に必要なのは「申請書」と「保険証」だけ
- 訪問調査は日常の様子を見るだけで、試験ではない
- 認定結果は7段階あり、状態が変われば再申請できる
- 申請は家族や地域包括支援センターが代行できる
申請のタイミングは、誰かに決めてもらうものではなく、ご自身の状況を見ながら判断していいものです。焦る必要はありませんが、「そろそろかもしれない」と感じたときが、情報を整理するタイミングかもしれません。
最終的な判断は、ご自身やご家族の状況に合わせて行ってください。不明点がある場合は、お住まいの市区町村窓口または地域包括支援センターにご相談されることを考え方の一例します。