サイバー保険は中小企業にも必要?導入を迷う理由と実際のところ

サイバー保険は中小企業にも必要?導入を迷う理由と実際のところ

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況により最適な判断は異なります。必要に応じて公的情報や専門家へご確認ください。

「サイバー保険って、うちみたいな小さな会社でも入るべきなの?」

大企業ならともかく、従業員が数十人規模の中小企業にサイバー攻撃なんて本当に起こるのか。そもそも保険料の負担も気になるし、何をどこまで補償してくれるのかもよくわからない。

そう考えて、なんとなく後回しにしている方は少なくありません。

ニュースで大企業の情報漏洩が報じられるたび「うちも何か対策しないと」と思いながらも、具体的に何から始めればいいのか、保険が本当に必要なのか、判断がつかないまま時間が過ぎていく。その状態は決しておかしなことではありません。

この記事では、中小企業がサイバー保険を検討する際に知っておきたい情報を整理します。

中小企業を狙うサイバー攻撃は実際に起きている

中小企業を狙うサイバー攻撃は実際に起きている

「うちは大した情報を持っていないから大丈夫」

そう思われる方もいるかもしれません。ただ、実際の攻撃状況を見ると、少し違う側面が見えてきます。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査によると、2022年に中小企業が受けたサイバー攻撃の被害報告は前年比で増加傾向にあります。攻撃者の視点から見ると、中小企業は大企業に比べてセキュリティ対策が手薄なことが多く、「狙いやすいターゲット」として認識されているという指摘もあります

実際に起きている被害の例を見てみましょう。

よくある被害のパターン

ランサムウェア攻撃
システムを暗号化され、復旧のために身代金を要求される被害です。従業員30名規模の製造業で、取引先とのやり取りに使っていたメールサーバーが暗号化され、2週間業務が停止したケースがあります。復旧費用だけで数百万円かかったという報告もあります。

標的型メール攻撃
従業員を装ったメールから社内システムに侵入され、顧客情報が流出するケースです。50名規模のサービス業で、顧客約3,000件の個人情報が漏洩し、お詫び対応や調査費用で1,000万円以上の負担が発生した事例があります。

取引先を経由した攻撃
大手企業との取引がある中小企業が、その取引関係を利用して攻撃される「サプライチェーン攻撃」も増えています。自社は直接狙われていなくても、取引先への攻撃の踏み台にされるケースです。

これらは特別な事例ではなく、規模や業種を問わず起きているとも言えます。

サイバー保険が補償する範囲

では、サイバー保険に加入すると、実際に何が補償されるのでしょうか。

保険商品によって内容は異なりますが、一般的に以下のような費用が補償対象になる傾向があります。

主な補償内容
  • 事故対応費用(調査・通知・コールセンター設置など)
  • 損害賠償費用(顧客や取引先への賠償)
  • データ復旧費用
  • 事業中断による損失
  • サイバー恐喝対応費用

具体的にどういう時に使えるのか

たとえば、顧客情報が漏洩した場合を考えてみます。

まず必要になるのが、原因調査のための専門業者への依頼費用です。どこから侵入されたのか、どの範囲の情報が流出したのかを特定する必要があります。この調査だけで数十万円から数百万円かかることがあります。

次に、被害を受けた顧客への通知やお詫び対応です。郵送費用、コールセンターの設置、場合によっては新聞広告なども必要になるかもしれません。

さらに、情報漏洩によって顧客が実際に損害を受けた場合、損害賠償を求められる可能性もあります。

これらの費用を合計すると、数百万円から数千万円規模になることも珍しくありません。サイバー保険は、こうした予期せぬ出費に備える選択肢の一つです。

保険料の相場と加入のハードル

保険料の相場と加入のハードル

「でも、保険料が高いんじゃないの?」

これも多くの方が気にされるポイントです。

中小企業向けサイバー保険の保険料は、企業規模や業種、補償内容によって大きく異なります。目安として、従業員50名規模の企業で、年間保険料が10万円から30万円程度というケースが多いようです。

ただし、加入にあたっては保険会社の審査があります。

  • 基本的なセキュリティ対策(ウイルス対策ソフト、ファイアウォールなど)が導入されているか
  • 従業員へのセキュリティ教育を実施しているか
  • データのバックアップ体制があるか
  • システムの脆弱性管理をしているか

これらの対策が不十分な場合、保険料が高くなったり、加入自体を断られたりすることもあります。

逆に言えば、サイバー保険に加入できる状態を目指すこと自体が、自社のセキュリティレベルを見直すきっかけになる可能性があるとも言えます。

保険だけでは防げないこと

ここで注意しておきたいのは、サイバー保険はあくまで「被害が起きた後の補償」という位置づけだということです。

保険に入っていれば攻撃を防げるわけではありません。また、すべての損失が補償されるわけでもありません。

たとえば、失った信用や取引先との関係は、お金では取り戻せません。情報漏洩の事実が報道されれば、企業イメージの低下は避けられないでしょう。

また、保険金の支払いには一定の条件があります。故意や重大な過失がある場合、補償されないこともあります。「保険に入っているから安心」ではなく、基本的なセキュリティ対策と組み合わせて検討することが重要です。

検討する際に整理しておきたいこと

検討する際に整理しておきたいこと

サイバー保険の必要性を判断するには、自社の状況を整理してみることが役立ちます。

自社が持つリスクの確認

  • どんな情報を扱っているか(顧客情報、取引先情報、技術情報など)
  • その情報が漏洩したら、どの程度の影響があるか
  • 現在のセキュリティ対策はどの程度か
  • 被害が出た場合、どれくらいの費用負担が想定されるか

保険以外の選択肢も含めて考える

サイバー保険は選択肢の一つですが、すべてではありません。

  • 基本的なセキュリティ対策の強化を検討する
  • 従業員教育に投資することを視点の一つとする
  • システムの脆弱性診断を受けることを検討する
  • 外部の専門家に相談することを検討する

こうした対策と保険を組み合わせて考えることで、より現実的な判断ができるようになります。

判断を急ぐ必要はありません

サイバー保険の検討は、自社のセキュリティ状況を見直す機会でもあります。すぐに結論を出す必要はなく、まずは情報を集めて、自社にとって何が必要かを整理する時間を持つことが大切です。

相談先の選び方

「じゃあ、誰に相談すればいいの?」

サイバー保険について相談できる窓口はいくつかあります。

保険代理店
複数の保険会社の商品を比較する際の視点として提案してくれます。ただし、セキュリティ対策そのものについては専門外の場合もあります。

セキュリティベンダー
セキュリティ対策の専門家です。保険の提案はできないかもしれませんが、自社に必要な対策レベルを把握するには適しています。

経営コンサルタント
経営全体の視点から、リスク管理の一環として保険を位置づけて考えることができます。

どこに相談するにしても、自社の状況を正直に伝えることが大切です。「こう見られたい」ではなく、「実際にどうなっているか」を共有することで、より適切な情報が得られます。

この記事のまとめ
  • 中小企業を狙うサイバー攻撃は実際に増えており、規模や業種を問わず被害が報告されています
  • サイバー保険は事故対応費用や損害賠償など、被害後の費用を補償する選択肢です
  • 保険料は企業規模や補償内容によって異なり、年間10万円から30万円程度が一つの目安です
  • 保険だけでは攻撃を防げないため、基本的なセキュリティ対策との組み合わせが重要です
  • まずは自社のリスクを整理し、保険以外の選択肢も含めて検討することができます

サイバー保険が必要かどうかは、企業によって答えが異なります。

「入らなければいけない」わけでも、「入る必要がない」わけでもありません。大切なのは、自社の状況を把握して、どんな選択肢があるのかを知った上で、ご自身のペースで判断することです。

今すぐ決める必要はありません。まずは情報を集めて、自社にとって何が必要かを整理する時間を持つことから始めてみてください。