口コミサイトを開いて、事故対応の評価を見比べている。星の数、コメント、対応の早さ。どれも参考になるような、ならないような。
「この保険会社は対応が早い」と書いてあっても、それが自分の事故のときも同じとは限らない。「担当者が親切だった」という感想も、担当者によるんじゃないかと思ってしまう。
口コミを信じて決めるのも不安だし、かといって他に何を基準にすればいいのかもわからない。事故対応の良し悪しは、実際に事故に遭わないと分からないというのも、なんだか釈然としない。
「口コミを見ても結局決められない自分」を責めたくなるけれど、それは判断材料が足りないからではなく、口コミという情報の性質そのものが曖昧だからかもしれない。
口コミで事故対応を判断しようとする人は少なくない

自動車保険を選ぶとき、事故対応の口コミを重視する人は約65%にのぼるという調査結果がある。保険料の次に気になる項目として挙げられることが多い。
それだけ多くの人が「実際に使った人の声」を知りたいと思っている。パンフレットに書いてある「24時間365日対応」「専任担当制」といった文言だけでは、本当のところがわからないと感じるのは自然なことだ。
ただ、口コミを見れば見るほど、逆に迷いが深まることもある。同じ保険会社なのに評価が真っ二つに分かれていたり、数年前の口コミと最近の口コミで内容が全く違ったり。どれを信じればいいのか、基準が揺らいでいく。
口コミに書かれている「事故対応」の中身は人によって違う
口コミで「事故対応が良かった」と書かれているとき、その人が何を指して「良かった」と言っているのかは、実はバラバラだ。
ある人は「電話がすぐつながった」ことを評価し、別の人は「保険金が早く振り込まれた」ことを評価している。また別の人は「担当者の言葉遣いが丁寧だった」ことを挙げている。
- 初動対応の速さ(事故受付から連絡までの時間)
- 担当者の態度・説明のわかりやすさ
- 示談交渉の進め方
- 保険金支払いまでの期間
- 修理工場の手配のスムーズさ
自分が事故に遭ったとき、何を重視するかは、そのときの状況次第だ。夜中の事故なら「すぐ電話がつながること」が最優先かもしれないし、相手との交渉が難航しそうなら「示談交渉力」が大事になる。
口コミを見るとき、「その人が何を重視して評価しているのか」まで読み取ろうとすると、少し見え方が変わってくる。
同じ保険会社でも評価が分かれる理由

「A社は対応が良い」という口コミと「A社は最悪だった」という口コミが、同じページに並んでいることがある。どちらも嘘ではないのだろうけれど、なぜこんなに評価が割れるのか。
理由の一つは、事故対応は担当者の個人差が大きいということ。同じ会社でも、担当者によって対応の質が変わることは珍しくない。経験年数、コミュニケーション能力、その日の業務量。様々な要素が絡む。
もう一つは、事故の内容によって対応の難易度が変わること。過失割合が明確な事故と、双方の主張が食い違う事故では、解決までの時間もプロセスも全く違う。後者の場合、どんなに優秀な担当者でも時間がかかるし、契約者が「対応が遅い」と感じることもある。
さらに、契約から何年目かによっても、対応の手厚さが変わる場合がある。長期契約者には専任担当がつくが、初年度契約者には一般窓口対応になる、といったケースもゼロではない。
口コミサイトに載らない情報もある
口コミサイトには、どうしても「極端な体験」が集まりやすい。すごく良かったか、すごく悪かったか。普通の対応だった場合、わざわざ口コミを書く人は少ない。
つまり、実際の利用者の大半を占める「可もなく不可もなく」の体験は、口コミには反映されにくい。星3つの評価は少なく、星5つと星1つばかりが目立つ。
また、保険会社によっては「口コミを書いてくれたら特典」といったキャンペーンを行っていることもある。そうした口コミは、自然発生的なものとは少し性質が異なる。
投稿日が古い口コミは、現在の対応体制とは異なる可能性があります。保険会社は数年単位でシステムや人員配置を見直すことがあるため、3年以上前の口コミは参考程度に留めたほうが無難です。
事故対応以外で見ておいたほうがいい部分

口コミで事故対応ばかりを気にしてしまうけれど、実際に保険を使うときに影響するのは、もう少し手前の部分だったりする。
たとえば、事故受付の窓口がどれだけ充実しているか。24時間対応と書いてあっても、深夜帯は自動音声だけで翌朝まで担当者と話せない会社もある。一方で、深夜でも専任スタッフが対応してくれる会社もある。
また、ロードサービスの内容も見ておきたい部分だ。事故ではなく故障やバッテリー上がりで困ることのほうが、実は頻度としては多い。レッカー移動の距離制限、バッテリー交換の費用負担、宿泊費用の補償など、細かい違いがある。
さらに、保険金請求の手続きがどれくらい簡略化されているかも重要だ。書類を何枚も書かされるのか、アプリで完結するのか。事故後の精神的負担が大きいときに、手続きが煩雑だとそれだけでストレスになる。
口コミを「参考」にする距離感
口コミを全く見ないのも不安だし、口コミだけで決めるのも不安。ちょうどいい距離感がわからない。
一つの考え方として、口コミは「傾向」を知るために見るという使い方がある。個別の体験談を鵜呑みにするのではなく、複数の口コミを並べて読んだときに、何度も出てくるキーワードがあるかどうかを見る。
たとえば、「担当者がコロコロ変わる」という内容が複数の口コミに出てくるなら、それはその会社の体制として起こりやすいことかもしれない。逆に、一つの口コミにしか書かれていないことは、たまたまその人に起きたことかもしれない。
また、口コミを見るときは投稿者の契約内容にも注目するといい。車両保険の有無、特約の種類、保険料のレンジ。同じような契約内容の人の口コミのほうが、自分の状況に近い参考になる。
口コミ以外で事故対応の質を推測する方法

口コミに頼らずに事故対応の質を推測する方法もいくつかある。
一つは、損害サービス拠点の数と配置を確認すること。全国に拠点が多い会社は、現地での対応がしやすい。逆に拠点が少ない会社は、電話対応が中心になる可能性が高い。
もう一つは、事故対応満足度調査の結果を見ること。第三者機関が実施している調査なら、口コミよりも客観性がある。ただし、調査対象者の属性や調査方法によって結果が変わるので、複数の調査を見比べるといい。
さらに、保険会社の公式サイトで「事故対応の流れ」がどれだけ詳しく書かれているかも一つの指標になる。曖昧な説明しかない会社よりも、具体的なステップと担当者の役割が明記されている会社のほうが、体制が整っている可能性が高い。
- 事故受付から初回連絡までの目安時間が書かれているか
- 担当者の役割分担が明示されているか
- 示談交渉の進め方が具体的に説明されているか
- 保険金支払いまでの標準的な期間が示されているか
事故対応の「良さ」は事故が起きないと確かめられない矛盾
自動車保険を選ぶとき、事故対応の質を事前に確かめる方法は、実は完全にはない。どんなに口コミを読んでも、どんなに調査結果を見ても、自分が事故に遭ったときにどうなるかは、そのときにならないとわからない。
それは不安なことだけれど、逆に言えばどの保険を選んでも、結果は事故が起きてみないとわからないということでもある。
だから、口コミで完璧な答えを見つけようとしなくてもいい。口コミはあくまで「他人の体験」であって、自分の体験とは別のものだ。
今の自分が優先したいことを整理する

事故対応の口コミを見ているとき、本当に知りたいのは「どの保険会社がいいか」ではなく、「自分が事故に遭ったときに、何を求めるか」かもしれない。
すぐに駆けつけてくれることなのか。丁寧に説明してくれることなのか。とにかく早く解決してくれることなのか。自分の優先順位が見えてくると、口コミの見方も変わってくる。
- 口コミで事故対応を判断しようとする人は多いが、口コミの「良い対応」は人によって基準が違う
- 同じ保険会社でも担当者や事故内容によって評価が分かれる
- 口コミは「傾向」を知るために複数見比べる使い方が有効
- 口コミ以外にも、拠点数や公式サイトの情報から推測できる部分がある
- 事故対応の質は事故が起きないと確かめられないという矛盾がある
- 自分が事故時に何を優先したいかを整理することが、判断の軸になる
口コミを見て決められないのは、判断力がないからではない。口コミという情報が持つ曖昧さと、事故対応という体験の個別性が、そもそも噛み合っていないからだ。
口コミを参考にしながらも、自分の優先順位を少しずつ確認していく。そのプロセスは、急がなくていい。今すぐ答えを出さなくても、整理しながら考えていける。