「生命保険で相続税対策ができる」と聞いて、調べ始めたものの、本当に自分に必要なのかどうか、よくわからなくなっていませんか。
税理士に相談するほどの資産があるわけでもない。でも、何もしないで後から困るのも不安。生命保険なら相続税が非課税になると聞いたけれど、それがどれくらい意味があるのか、実感が持てない。
加入するなら早い方がいいと言われても、保険料を払い続けられるかもわからない。そもそも相続税がかかるかどうかも、はっきりしていない。
こういう状態で立ち止まっているのは、決しておかしなことではありません。
生命保険が相続税対策になる仕組み

生命保険が相続税対策として使われる理由は、死亡保険金に非課税枠があるからです。
相続財産として現金や不動産を残す場合、それらはすべて相続税の課税対象になります。一方、生命保険の死亡保険金には、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠が設けられています。
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人なら、1,500万円までの死亡保険金は相続税がかかりません。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税枠
ただし、これは「相続税がかかる場合」に意味を持つ仕組みです。
そもそも相続税には基礎控除があり、3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数までは課税されません。先ほどと同じ家族構成なら、4,800万円までは相続税がかからないということになります。
この基礎控除を超える財産がある場合に、生命保険の非課税枠が使えるかどうかが意味を持ちます。
相続税がかかる人はどれくらいいるのか
「相続税対策」という言葉を聞くと、誰もがやらなければいけないことのように感じるかもしれません。
実際には、相続税がかかる人の割合は約9%程度です(令和3年分、国税庁発表)。つまり、10件の相続のうち9件は相続税がかかっていません。
自宅と預貯金を合わせても基礎控除の範囲内であれば、相続税の心配はありません。そういう状況で「相続税対策のために生命保険に入る」という判断をする必要はないともいえます。
ただし、財産の内訳によっては別の視点も出てきます。
納税資金としての生命保険

相続税がかかる場合でも、納税資金が現金で用意できるなら、生命保険を使う必要性は低くなります。
一方で、財産の大部分が不動産で現金が少ない場合、相続税を払うために不動産を売却しなければならないことがあります。この場合、生命保険の死亡保険金を納税資金として使うという考え方があります。
死亡保険金は、相続手続きが完了する前でも受け取れます。相続税の申告期限は死亡から10か月以内ですが、死亡保険金は通常、請求から数日〜数週間で受け取れます。
これは「対策」というより、納税のタイミングと資金の流動性の問題といえます。
保険料を払い続けた結果、手元の現金が減ってしまい、生活に影響が出ては本末転倒です。納税資金として備えるなら、保険料の負担が無理のない範囲かどうかを確認する必要があります。
「対策」という言葉が持つ重さ
「相続税対策」という言葉には、どこか「やらなければいけない」という響きがあります。
でも、対策が必要かどうかは、相続税がかかるかどうか、現金がどれくらいあるか、家族がどう受け取るか、といった個別の状況によって変わります。
誰かにとって必要な対策が、別の誰かにとっても必要とは限りません。
生命保険に加入することで安心できるなら、それは意味があります。でも、「対策しなければ」という焦りだけで決める必要はありません。
今の状況を整理するだけでもいい

相続税がかかるかどうか、生命保険が必要かどうか、その判断は今すぐしなくてもかまいません。
ただ、何も決めないまま不安だけが残るなら、一度、自分の財産がどれくらいあるのか、相続税がかかりそうなのか、整理してみるだけでも気持ちは変わります。
話を聞くことと、加入することは別です。
自分のペースで考えていい
生命保険を使った相続税対策は、誰にでも必要なものではありません。
相続税がかかる見込みがあり、現金が少なく、納税資金を準備しておきたいと感じるなら、選択肢のひとつとして考える意味はあります。
でも、そうでないなら、無理に急ぐ必要はありません。
- 生命保険には法定相続人1人あたり500万円の非課税枠がある
- 相続税がかかる人は全体の約9%程度
- 財産の内訳や現金の有無によって、生命保険の必要性は変わる
- 納税資金として使う場合、保険料負担が無理のない範囲かが重要
- 「対策」という言葉に焦る必要はない
自分の状況に合わせて、必要なら考える。必要ないなら、そのままでいい。それでいいと思います。