「介護保険料って、住んでいる場所で金額が違うんだ」と気づいたとき、少し戸惑いませんでしたか。
同じ国の制度なのに、なぜ自分の住む地域と隣の市で金額が違うのか。もしかして損をしているのか、それとも何か理由があるのか。調べようとしても専門用語が多くて、結局よくわからないまま保険料だけは毎月引かれていく。
そんなモヤモヤを抱えながら、「まあ、そういうものなんだろう」と流してしまっている方は少なくありません。
この記事では、介護保険料に地域差が生まれる仕組みを、できるだけシンプルに整理していきます。理解したからといって保険料が安くなるわけではありませんが、「なぜこの金額なのか」が少しでも見えてくると、納得できる部分も出てくるかもしれません。
介護保険料の地域差は「必然的に生まれる」仕組みになっている

介護保険料は、国が一律で決めているわけではありません。実は市区町村ごとに金額が設定される仕組みになっています。
これは制度の欠陥ではなく、むしろ意図的な設計という考え方があります。なぜなら、介護保険は「その地域で必要な介護サービスを、その地域の住民で支え合う」という考え方で作られているからです。
地域差が生まれる3つの要因
介護保険料の金額を決める要素は、大きく分けて3つあるとされています。
- 高齢者の人口割合
- 介護サービスの利用状況
- 地域の介護サービス基盤
これらの要素が地域によって異なるため、保険料にも差が出てくる傾向があります。
令和3〜5年度の基準額(月額)で見ると、最も高い自治体は9,800円、最も低い自治体は3,300円程度とされています。同じ国の制度でも、約3倍の開きがあります。
高齢化率が高い地域ほど保険料が高くなる傾向
「高齢者が多い地域は保険料が高い」というイメージを持っている方もいるかもしれません。これは部分的には正しいという見方もありますが、単純に高齢者の数だけで決まるわけではありません。
支える側と支えられる側のバランス
介護保険料を負担するのは40歳以上の人です。一方、介護サービスを利用するのは主に65歳以上の方です。
つまり、地域の中で「保険料を払う人」と「サービスを使う人」のバランスが、保険料の金額に影響する傾向があります。
- 若い世代が多く、高齢者が少ない地域:保険料を払う人が多く、使う人が少ない→保険料は比較的低めになる傾向
- 高齢者が多く、現役世代が少ない地域:保険料を払う人が少なく、使う人が多い→保険料は高めになる傾向
ただし、これだけで決まるわけではありません。高齢者が多くても、元気な方が多ければサービス利用は少なくなりますし、逆に高齢化率が低くても、重度の介護が必要な方が多ければ費用はかさむ可能性があります。
サービス利用状況が保険料に影響する仕組み

介護保険料の金額を決める上で、大きな影響を与える要素の一つが実際にどれだけ介護サービスが使われているかです。
給付費が増えれば保険料も上がる傾向
介護保険は「使った分だけ費用がかかる」仕組みとされています。地域内で介護サービスの利用が増えれば、それを支えるための財源も必要になります。
具体的には、以下のような要素が影響する傾向があります。
- 要介護認定を受けている人の割合
- 施設入所者の数
- 在宅サービスの利用頻度
- 一人あたりの介護サービス利用額
たとえば、施設入所が多い地域では、在宅中心の地域に比べて給付費が高くなる傾向があります。施設介護は24時間体制のケアが必要なため、どうしても費用が大きくなるからです。
地域の「介護文化」も影響する可能性
同じような高齢化率でも、地域によって介護サービスの使われ方には違いがあるとされています。
- 家族介護が主流で、サービス利用が控えめな地域
- 積極的に外部サービスを活用する文化がある地域
- 施設入所を選択する人が多い地域
こうした「地域の介護に対する考え方」も、間接的に保険料に影響を与える可能性があります。
介護サービス基盤の整備状況による違い
もう一つ見逃せないのが、地域にどれだけ介護サービスの基盤が整っているかという点です。
サービスが多い地域は保険料が高い傾向
「介護施設やサービスが充実している地域は、保険料も高いのでは?」と思うかもしれません。実際、サービス基盤が整っている地域では、それを維持するための費用が保険料に反映される傾向があります。
ただし、これは単純に「損」というわけではありません。サービスが充実していれば、いざというときに選択肢が多いというメリットもあります。
逆に、サービスが少ない地域では保険料が低めになることもありますが、必要なときにサービスを受けられないリスクも考える必要があります。
地域格差は「良い・悪い」では測れない
保険料が高い地域が「悪い地域」、低い地域が「良い地域」というわけではありません。保険料の金額は、その地域の介護ニーズとサービス体制を反映した結果という見方があります。
保険料は3年ごとに見直される

介護保険料は、固定されているわけではありません。3年に一度、各自治体が「介護保険事業計画」を策定するタイミングで見直されます。
見直しの仕組み
各市区町村は、今後3年間で必要になる介護サービスの量を予測し、それに必要な財源を計算します。その上で、保険料の基準額を設定します。
- 高齢化が進んでサービス利用が増える見込み→保険料は上がる傾向
- サービス利用が安定または減少する見込み→保険料は据え置きまたは下がる可能性
全国的には、高齢化の進展に伴い、保険料は上昇している地域が多いのが現状とされています。
「所得段階別」の設定もある
介護保険料は、全員が同じ金額を払うわけではありません。所得に応じて9〜13段階程度に分かれており、所得が低い方は負担が軽く、高い方は多めに負担する仕組みになっています。
「基準額」として発表されるのは、標準的な所得層の金額です。実際に自分が払う金額は、所得段階によって異なります。
地域差があることをどう受け止めるか
ここまで読んで、「結局、自分の住んでいる地域の保険料が高いのは仕方ないのか」と感じた方もいるかもしれません。
確かに、個人で保険料の金額をコントロールすることは難しいのが現状です。引っ越せば保険料は変わりますが、それだけのために住む場所を変えるのは現実的ではないでしょう。
ただ、仕組みを知ることで、「なぜこの金額なのか」の背景が少しでも見えてくると、納得できる部分も出てくるかもしれません。
自分の住む市区町村の介護保険料や、近隣自治体との比較を検討する際の視点は、各自治体のホームページで公開されています。「〇〇市 介護保険料」で検索すると、現在の基準額や所得段階別の金額を確認できます。
また、保険料が高い地域でも、その分サービスが充実していたり、施設の選択肢が多かったりする場合もあります。逆に保険料が低くても、必要なサービスが不足している可能性もあります。
「金額だけ」で良し悪しを判断するのではなく、自分や家族がいざというときにどんなサービスを受けられるのか、という視点で見ることも大切な選択肢の一つかもしれません。
まとめ

- 介護保険料は市区町村ごとに設定されるため、地域差が生まれる
- 高齢化率、サービス利用状況、介護基盤の3つが主な要因とされている
- 保険料は3年ごとに見直され、全国的には上昇傾向
- 金額の高低だけでなく、サービス内容も含めて考える視点が大切
介護保険料の地域差は、その地域の高齢化の状況や介護サービスの使われ方を反映した結果という見方があります。「なぜ自分の地域はこの金額なのか」を理解することは、制度そのものを身近に感じる一歩になるかもしれません。
すぐに何かを決める必要はありません。まずは自分の住む地域の状況を、ご自身のペースで確認してみることから始めてみてもいいかもしれません。