「認知症」と「介護」、どちらの保険を考えればいいのか分からない

親のことを考えると、何か備えておいた方がいいような気がする。でも保険のパンフレットを見ると「認知症保険」と「介護保険」、どちらも似たようなことが書いてあって、違いがよく分からない。
両方入る必要があるのか、それともどちらか一方でいいのか。そもそも自分の家族にはどちらが必要なのか。調べれば調べるほど、何を基準に考えればいいのか分からなくなってくる。
こういう状態で立ち止まっている人は、実は少なくありません。保険の名前だけ見ても、実際にどんな状況で役立つのか、イメージしづらいのは当然のことです。
認知症保険と介護保険、何が違うのか
この2つの保険の違いは、「何をきっかけに保険金が支払われるか」という点にあります。
認知症保険:認知症と診断されたら支払われる
認知症保険は、医師によって認知症と診断されることが、保険金支払いの条件になります。診断された時点で一時金が受け取れるタイプが多く、金額は100万円から500万円程度が一般的です。
認知症と診断されても、すぐに介護が必要になるとは限りません。軽度の段階では、日常生活をほぼ自分でこなせる場合もあります。この段階で受け取れるお金があれば、本人の生活環境を整えたり、家族が仕事を調整したりする余裕が生まれます。
ただし、保険会社によって「認知症」の定義は異なります。アルツハイマー型認知症だけを対象にしているものもあれば、レビー小体型認知症や血管性認知症なども含むものもあります。
介護保険:一定の介護状態になったら支払われる
一方、介護保険は「介護が必要な状態」になったときに支払われます。この「介護が必要な状態」の定義は、大きく分けて2つのパターンがあります。
- 公的介護保険の要介護認定(要介護2以上など)
- 保険会社独自の基準(食事・入浴・排泄などの介助が必要な状態)
公的介護保険の要介護認定を基準にしている場合、要介護2以上や要介護3以上といった条件が設定されていることが多いです。要介護2は、日常生活に部分的な介助が必要な状態を指します。
保険金の受け取り方も、一時金タイプと年金タイプがあります。年金タイプの場合、介護状態が続く限り、毎年一定額を受け取り続けることができます。
どちらの保険が必要かは「何に備えたいか」による

認知症保険と介護保険、どちらが必要かは、何を心配しているかによって変わってきます。
認知症による早期の負担に備えたい場合
認知症は、介護が必要になる前の段階でも、家族の負担が発生することがあります。
たとえば、軽度の認知症でも、一人暮らしを続けるのが難しくなることがあります。実家の片付けや引っ越し、見守りサービスの導入など、初期費用がかかる場面は少なくありません。
また、家族が仕事を調整したり、頻繁に実家に通ったりする必要が出てくることもあります。交通費や時間的な負担を考えると、早い段階でまとまったお金があると助かる、という考え方もあります。
長期的な介護費用に備えたい場合
一方で、介護状態が長く続いた場合の費用負担を心配しているなら、介護保険の方が合っているかもしれません。
生命保険文化センターの調査によると、介護にかかる期間の平均は5年1ヶ月、月々の費用は平均8.3万円となっています。これが数年続くと、トータルで数百万円の負担になります。
年金タイプの介護保険であれば、介護状態が続く限り毎年保険金を受け取れるため、長期的な費用負担に対応しやすい面があります。
実際には重なる部分もある
ここまで違いを説明してきましたが、実際には2つの保険が重なる部分もあります。
認知症が進行すれば、最終的には介護が必要な状態になります。つまり、認知症保険の支払い条件を満たした後、介護保険の支払い条件も満たすことになるケースは珍しくありません。
両方の保険に入っていても、同じ状態で両方から保険金が出るとは限りません。認知症と診断された時点では、まだ要介護認定を受けていない可能性もあります。
また、最近では「認知症にも介護にも対応」という商品も出てきています。こうした商品は、認知症と診断された時点で一時金、その後介護状態になったら年金、という形で段階的に保険金を受け取れる設計になっていることがあります。
保険料と保障内容のバランス

保険を考えるとき、保障内容だけでなく、保険料も気になるところです。
認知症保険の保険料は、50歳の人が一時金300万円の保障で加入した場合、月々3,000円から5,000円程度が目安です。
介護保険は、保障内容によって保険料の幅が大きくなります。一時金タイプなら月々3,000円程度から、年金タイプで手厚い保障をつけると1万円を超えることもあります。
保険料は年齢が上がるほど高くなるため、「いつ加入するか」も考えどころです。ただ、早く入れば長く保険料を払い続けることにもなるので、総額で考える必要があります。
- 今の家計で無理なく払い続けられる金額か
- 他の保険と重複していないか
- 貯蓄とのバランスはどうか
こうした点を整理してみると、自分の状況が少し見えてくるかもしれません。
「正解」を探さなくてもいい
認知症保険と介護保険、どちらが正しいということはありません。
家族構成も、経済状況も、何を心配しているかも、人それぞれ違います。親の健康状態や、自分の仕事の状況、兄弟姉妹との関係なども関係してきます。
だから、誰かにとっての正解が、自分にとっても正解とは限らない。そう考えると、少し気持ちが楽になるかもしれません。
今すぐ決める必要があるわけでもありません。情報を整理して、自分の状況と照らし合わせて、ゆっくり考えていく。そういう時間を持つことも、大切な一歩です。
- 認知症保険は認知症と診断された時点で支払われる
- 介護保険は一定の介護状態になったときに支払われる
- どちらが必要かは「何に備えたいか」による
- 実際には重なる部分もあり、両方に対応する商品もある
- 保険料と保障内容のバランスを自分のペースで考えていい
保険のことを考えるのは、正直なところ、あまり楽しい作業ではありません。でも、情報を少しずつ整理していくことで、自分なりの判断材料は揃っていきます。
焦らず、自分のペースで考えていってください。