「自転車保険」と「個人賠償責任保険」って、何が違うんだろう

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品の推奨や、個別の契約内容に関する判断を提供するものではありません。実際の契約内容や補償範囲は、各保険会社や契約条件によって異なります。
自転車保険のことを調べていると、「個人賠償責任保険でもカバーできる」という情報を見かけることがあります。でも、それなら自転車保険って何なのか。両方必要なのか、それとも片方だけでいいのか。
保険の名前が違うと、中身も全然違うような気がして、どちらを選べばいいのか分からなくなります。「自転車保険に入っておけば安心」と思っていたのに、実は別の保険で足りるかもしれない。でも、本当にそれで大丈夫なのか確信が持てない。
そんな風に、保険の種類と内容の関係がはっきりしないまま、何となくモヤモヤしている人は少なくありません。
「自転車保険」という名前の保険は、実は決まった形がない
まず知っておくと整理しやすいのは、「自転車保険」という名前の保険には、法律で決まった定義がないということです。
保険会社によって、「自転車保険」と呼んでいる商品の中身は異なります。ある会社では自転車事故による賠償責任だけをカバーする商品を「自転車保険」と呼び、別の会社では賠償責任に加えて自分のケガの補償もセットにした商品を同じ名前で販売しています。
つまり、「自転車保険」という言葉は、保険の種類を示す正式な名称ではなく、自転車に関連する補償をまとめた商品の通称として使われています。
一方、「個人賠償責任保険」は、保険の補償内容を示す正式な名称です。日常生活の中で、他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりして、法律上の賠償責任を負った場合に保険金が支払われる仕組みです。
この「個人賠償責任保険」の補償範囲には、自転車事故も含まれることがあります。
自転車保険と個人賠償責任保険の関係

多くの自転車保険は、実は「個人賠償責任保険」を中心に組み立てられています。
自転車保険として販売されている商品の多くは、以下のような構成になっています。
- 個人賠償責任保険(他人への賠償)
- 傷害保険(自分のケガの補償)
つまり、「自転車保険」という商品の核になっているのは、個人賠償責任保険です。そこに、自分がケガをしたときの補償(傷害保険)がセットになっているケースが多いということです。
逆に言えば、すでに個人賠償責任保険に加入していれば、自転車事故で他人に損害を与えた場合の賠償責任は、その保険でカバーできることがあります。
個人賠償責任保険が付いている保険は意外と多い
個人賠償責任保険は、単独で加入するよりも、他の保険に「特約」として付けられているケースが一般的です。
すでに以下のような保険に加入している場合、個人賠償責任保険が含まれていることがあります。
- 火災保険
- 自動車保険
- 傷害保険
- クレジットカードの付帯保険
たとえば、火災保険に加入するときに「個人賠償責任特約」を付けていれば、自転車事故による賠償責任も、その特約でカバーされることがあります。月々の保険料は100円~200円程度の追加で済むことが多く、補償額は1億円や3億円といった高額な設定が可能です。
自分が加入している保険の証券や契約内容を確認すると、すでに個人賠償責任保険が含まれていることに気づく場合もあります。
自転車保険にしかない補償もある

では、個人賠償責任保険があれば自転車保険は不要かというと、そうとも言えない場合があります。
自転車保険として販売されている商品には、個人賠償責任保険だけではカバーできない補償が含まれていることがあります。
自分のケガの補償
個人賠償責任保険は、他人に対する賠償責任をカバーする保険です。自分がケガをしたときの治療費や入院費は、対象外です。
自転車保険には、自分がケガをしたときの補償(傷害保険)がセットになっている商品が多くあります。自転車で転倒して骨折した場合や、相手がいない単独事故でケガをした場合でも、保険金が支払われることがあります。
示談交渉サービス
自転車事故で相手にケガをさせた場合、賠償金額や過失割合について相手と話し合う必要があります。この交渉を保険会社が代わりに行ってくれるのが「示談交渉サービス」です。
個人賠償責任保険にも示談交渉サービスが付いていることがありますが、付いていない商品もあります。一方、自転車保険として販売されている商品の多くには、このサービスが含まれています。
ロードサービスや弁護士費用特約
一部の自転車保険には、自転車が故障したときの搬送サービスや、事故の相手との交渉で弁護士に依頼する費用を補償する特約が付いていることもあります。
こうした補償は、個人賠償責任保険単体では提供されないことが多い内容です。
自分の状況を確認するための視点
「自転車保険」と「個人賠償責任保険」の違いを理解したうえで、自分にとって必要な補償を考えるときに、確認しておくと整理しやすい視点があります。
すでに個人賠償責任保険に加入している場合
火災保険や自動車保険に個人賠償責任特約が付いているなら、自転車事故による賠償責任は、その特約でカバーできることがあります。
この場合、追加で自転車保険に入るかどうかは、自分のケガの補償が必要かどうかで考えることになります。
自転車に乗る頻度が高い、通勤や通学で毎日使っている、といった状況であれば、自分のケガに備える補償を検討する余地があるかもしれません。
個人賠償責任保険に加入していない場合
まだ個人賠償責任保険に加入していないなら、自転車保険として販売されている商品に入るという選択肢もあります。
ただし、自転車保険として販売されている商品の保険料は、月々500円~1,000円程度が一般的です。一方、火災保険や自動車保険に個人賠償責任特約を付ける場合、月々100円~200円程度で済むことが多いです。
もし火災保険や自動車保険に加入しているなら、そちらに特約を追加するという方法もあります。
家族全員をカバーしたい場合
個人賠償責任保険の多くは、契約者本人だけでなく、同居の家族も補償の対象になることがあります。
たとえば、火災保険に個人賠償責任特約を付けた場合、配偶者や子どもが自転車事故を起こしたときも、同じ保険でカバーされることがあります。
家族全員が自転車を使う場合、一人ひとりが自転車保険に入るという方法もあれば、家族全員をカバーできる個人賠償責任保険を確認するという方法もあります。
補償の重複について知っておく

個人賠償責任保険は、複数の保険に付いていても、実際に支払われる保険金は、損害額を超えることはありません。たとえば、火災保険と自動車保険の両方に個人賠償責任特約が付いていて、自転車事故で1,000万円の賠償責任が発生した場合、どちらか一方の保険から1,000万円が支払われます。両方の保険から合計2,000万円が支払われるわけではありません。
そのため、すでに個人賠償責任保険に加入しているのに、さらに自転車保険に入ると、賠償責任の部分については補償が重複してしまうことがあります。
保険料を無駄にしないためにも、今加入している保険の内容を確認しておくと、整理しやすくなります。
自治体の条例で義務化されている地域もある
自転車保険への加入を義務化している自治体が増えています。
2024年時点で、東京都、大阪府、埼玉県、神奈川県など、多くの都道府県で自転車保険の加入が義務化されています。
ただし、ここで言う「自転車保険」とは、自転車事故による賠償責任をカバーする保険を指しています。つまり、個人賠償責任保険に加入していれば、この義務は満たしていることになります。
自治体の条例で求められているのは、「自転車保険」という名前の商品に入ることではなく、自転車事故で他人に損害を与えた場合の賠償責任に備えることです。
まとめ

- 「自転車保険」という名前の保険には、決まった定義がない
- 多くの自転車保険は、個人賠償責任保険を中心に組み立てられている
- 個人賠償責任保険は、火災保険や自動車保険の特約として付いていることが多い
- 自転車保険には、自分のケガの補償や示談交渉サービスが含まれることがある
- 自治体の義務化は、賠償責任をカバーする保険があれば満たせる
今すぐ何かを決める必要はありません。
まずは、今加入している保険の内容を確認してみる。自分がどんな補償を必要としているのか整理してみる。そういった小さな一歩から始めても十分です。
話を聞くだけでもいいですし、確認だけして保留するという選択もあります。
あなたが自分のペースで考えを進めるきっかけになれば幸いです。気になることがあれば、またいつでもこのページに戻ってきてください。
今加入している保険で何がカバーされているのか、自分に必要な補償は何なのか。そういったことを整理したいときは、保険の相談窓口で話を聞いてみるという方法もあります。
相談したからといって、その場で何かを決める必要はありません。話を聞くだけでも構いませんし、持ち帰って考えることもできます。
もし気になることがあれば、確認してみるという選択肢もあります。