収入保障保険と所得補償保険、名前は似ているけれど…

「収入保障保険」と「所得補償保険」。どちらも収入に関わる保険で、名前も似ているため混同されがちです。しかし、実際には保障する対象リスクも仕組みも大きく異なる全く別の保険です。
この記事では、両者の基本的な違いと、どのような視点で考え分ければよいのかを整理します。ただし、どちらが良いかは年齢・家族構成・職業・価値観により大きく変わることも併せてお伝えします。
- 収入保障保険と所得補償保険の基本的な仕組みの違い
- それぞれが保障する対象リスクの違い
- 保険料・保障期間・支払条件の比較する際の視点
- 公的保障との関係性
- 判断する際の考え方のポイント
基本的な仕組みの違い
まず、両者の最も基本的な違いを整理しましょう。
| 項目 | 収入保障保険 | 所得補償保険 |
|---|---|---|
| 対象リスク | 死亡・高度障害 | 病気・ケガによる就業不能 |
| 保険の種類 | 生命保険 | 損害保険 |
| 保険金の性質 | 定額給付 | 実損填補 |
| 保障期間 | 長期(10~40年程度) | 短期~中期(1~5年程度) |
| 更新 | 更新なし(満期まで継続) | 毎年更新が一般的 |
※保障内容・条件は商品により異なります
収入保障保険の基本
収入保障保険は死亡・高度障害時に遺族の生活費を保障する生命保険です。被保険者が亡くなった場合、遺族が毎月一定額(例:月額10万円)を年金形式で受け取れます。
多くが逓減型で、契約時から満期までの残り期間に応じて保険金総額が減少します。これは、時間が経つほど必要な保障期間が短くなるためです。子どもの成長とともに必要保障額が減る家庭には合理的な設計といえます。
所得補償保険の基本
所得補償保険は病気やケガで働けなくなった際の収入減少を補償する損害保険です[1]。被保険者本人が生きている間の就業不能状態が対象となります。
実際の収入減少額を基準とした実損填補が原則で、就業不能前の所得を超える保険金は支払われません。また、免責期間(支払対象外期間)が設定されており、多くの商品で30日、60日、90日、180日などから選択できます[1]。
保障する対象リスクの違い

両者の最も重要な違いは、保障する対象リスクです。
収入保障保険が保障するリスク
- 死亡リスク:病気・事故・自然災害等による死亡
- 高度障害リスク:約款で定める高度障害状態(両眼失明、四肢切断等)
つまり、被保険者に万一のことがあった場合の遺族の生活保障が目的です。被保険者本人は保険金を受け取ることはありません(高度障害時を除く)。
所得補償保険が保障するリスク
- 疾病による就業不能:がん、心疾患、脳血管疾患、うつ病等
- 傷害による就業不能:骨折、捻挫、交通事故の後遺症等
ただし、就業不能状態の定義は保険会社により異なります[1]。「医師の指示により自宅療養している状態」「入院または医師の指示による在宅療養」など、約款の確認が重要です。
また、精神疾患については、多くの商品で対象外または支払期間に制限(例:通算2年まで)があります。一方で、近年は精神疾患も同条件で保障する商品も登場しています。精神疾患のリスクを重視する場合は、加入時に約款・特約の保障範囲を確認しましょう。
保険料と保障期間の比較する際の視点
保険料の目安
30歳男性、月額10万円保障、65歳満了の場合の保険料目安は以下の通りです。
| 保険の種類 | 月額保険料の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 収入保障保険 | 2,500〜3,500円程度 | 定額給付のため比較的安価 |
| 所得補償保険 | 4,000〜6,000円程度 | 支払い確率が高いため高め |
※上記はあくまで目安です。実際の保険料は、喫煙の有無・健康状態・職業・保険会社の商品設計により異なります
一般的に、死亡保障(収入保障保険)は保険料が安く、生存保障(所得補償保険)は支払い確率が高いため保険料が高い傾向にあります[1]。
保障期間の違い
| 項目 | 収入保障保険 | 所得補償保険 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 10年、20年、60歳まで、65歳まで等 | 1年(毎年更新) |
| 満了方式 | 年満了・歳満了から選択 | 年満了が一般的 |
| 更新時保険料 | 更新なし(満期まで同額) | 年齢・健康状態により変動 |
| 継続性 | 健康状態悪化でも満期まで継続 | 健康状態により更新拒否の場合あり |
※保障期間・更新条件は商品により異なります
年満了は契約から一定の「年数」が経過したら満了(例:30歳で加入、10年満了 → 40歳で保障終了)、歳満了は被保険者が一定の「年齢」に達したら満了(例:30歳で加入、65歳満了 → 65歳で保障終了)となります[1]。
公的保障との関係性

民間保険を検討する前に、関連する公的保障を整理しておきましょう。
収入保障保険と遺族年金
会社員・公務員の遺族には以下の公的保障があります:
- 遺族基礎年金:子どもがいる遺族に支給
- 遺族厚生年金:会社員・公務員の遺族に支給
受給要件や金額は家族構成により異なりますが、これらの公的保障でカバーされない部分を民間の収入保障保険で補う考え方が一般的です。
所得補償保険と傷病手当金
会社員・公務員(健康保険加入者)が病気やケガで働けなくなった場合、傷病手当金が支給されます。
- 支給額:標準報酬月額の30分の1の3分の2(おおよそ給与の3分の2程度)
- 支給期間:通算1年6ヶ月
- 対象者:会社員・公務員(自営業者は対象外)
2022年1月の改正前は、支給開始から暦で1年6ヶ月経過すると終了でした。途中で復職しても期間はカウントされ続け、再発時に支給を受けられないケースがありました。改正後は通算制となり、復職期間はカウントされません。これにより復職後に再び働けなくなっても、残りの支給期間を受給できるようになりました。
所得補償保険の免責期間を選ぶ際は、この傷病手当金との兼ね合いを考慮する方が多いです。会社員であれば傷病手当金がある程度カバーするため、60日や90日の免責期間でも問題ないケースが多いといえます。
- 必要性は家計・家族状況・価値観で変わります。
- 制度や税制は変更される可能性があります。
- 具体的な判断は公的情報や契約条件の確認が前提です。
支払条件と注意点
収入保障保険の支払条件
収入保障保険の保険金支払いは比較的明確です:
- 死亡時:死亡診断書により支払い
- 高度障害時:約款で定める高度障害状態への該当
保険金は年金形式での受取が基本ですが、一時金での受取も選択できる商品が多くあります。ただし、一時金で受け取る場合、年金総額の60〜80%程度となります。この幅は保険会社の算定基準や残存保障期間により異なります。
所得補償保険の支払条件と制約
所得補償保険の支払いには、より詳細な条件があります:
- 免責期間:30日、60日、90日、180日等から選択
- 就業不能状態の定義:保険会社により異なる
- 支払対象外のケース:自傷行為、故意の事故、美容整形等
免責期間が設定されている理由は、短期間の就業不能による頻繁な請求を防ぎ、保険料を抑えるためです。免責期間中は傷病手当金や貯蓄でカバーする必要があります。
復職後に再び働けなくなった場合も、免責期間を満たせば再度給付金を受け取れます。ただし、通算支払限度がある商品では、総受給期間に制限があります。
税制上の取扱い

保険料の所得控除と保険金の税制も異なります。
| 項目 | 収入保障保険 | 所得補償保険 |
|---|---|---|
| 保険料控除 | 生命保険料控除 | 損害保険料控除なし |
| 保険金の税制 | 相続税または所得税 | 非課税 |
収入保障保険の保険金は、一括受取の場合は相続税、年金形式受取の場合は初年度が相続税、2年目以降は所得税(雑所得)の対象となります。死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人数)の適用もあります[2]。
一方、所得補償保険の給付金は、実際の収入減少を補償するものとして非課税扱いとなります。
判断する際の考え方
どちらを選ぶか、あるいは両方必要かは、以下の視点で整理できます。
優先すべきリスクから考える
| 重視するリスク | 適する保険 | 考え方 |
|---|---|---|
| 遺族の生活保障 | 収入保障保険 | 扶養家族がいる場合に重要 |
| 本人の療養中の生活費 | 所得補償保険 | 貯蓄が少ない場合や自営業者に重要 |
| 両方のリスクに備えたい | 両方加入 | 保険料負担と必要性のバランスで判断 |
家族構成による考え方の違い
- 扶養家族がいる場合:収入保障保険の優先度が高い
- 独身または夫婦のみ:所得補償保険の優先度が高い場合も
- 共働き世帯:どちらか一方の収入で生活可能なら優先度は下がる
職業・雇用形態による違い
- 会社員・公務員:傷病手当金があるため免責期間は長めでも可
- 自営業者:公的保障が少ないため所得補償保険の重要度が高い
- 危険職種:就業不能リスクが高いため所得補償保険を重視
年齢・ライフステージによる考え方
- 20〜30代:子どもの教育費期間は収入保障保険を重視
- 40〜50代:住宅ローン残高と貯蓄状況で判断
- 50代後半以降:子どもの独立により収入保障保険の必要性は低下
まとめ

収入保障保険と所得補償保険は、名前は似ていますが全く異なる保険です。
- 収入保障保険:死亡・高度障害時の遺族保障(生命保険)
- 所得補償保険:就業不能時の本人の収入補償(損害保険)
どちらを選ぶかは、家族構成・職業・年齢・価値観により大きく変わります。公的保障(遺族年金・傷病手当金)でカバーされる部分と、民間保険で補う部分を整理することが重要です。
ただし、状況によって考え方は変わります。ここから先は人によって判断が分かれる部分も多くなります。より具体的な比較検討の方法は、別の記事で詳しく解説しています。