退職金をもらえることになって、ふと「税金ってどうなるんだろう」と気になったものの、調べてみると「退職所得控除」「分離課税」といった言葉が並んでいて、結局よく分からないまま放置している。そんな状態かもしれません。
税金のことを考えなきゃいけない気はするけれど、何が分からないのかすら整理できていない。かといって、誰かに相談するほどのことなのか、それとも自分で何とかできるものなのか、その判断もつかない。
「対策」という言葉を見ると、何か特別なことをしなければいけないような気がして、焦りだけが先に立つ。でも実際には、何をどう「対策」すればいいのか、そもそも自分に必要なのかも分からない状態です。
退職金にかかる税金の基本的な仕組み

退職金には、給与とは別の税金のルールがあります。これは「退職所得」として扱われ、通常の給与所得とは計算方法が異なります。
退職金から税金を計算する際、まず「退職所得控除」という金額が差し引かれます。この控除額は、勤続年数によって決まります。
- 勤続年数20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
たとえば、勤続年数が25年の場合、退職所得控除は1,150万円(800万円 + 70万円 × 5年)になります。退職金が1,500万円だとすると、1,150万円を差し引いた350万円が課税対象です。
さらに、この課税対象額の半分だけが「退職所得」として税金の計算に使われます。つまり、350万円の半分である175万円に対して税金がかかることになります。
この仕組みは、長年働いてきた人への配慮として設けられているもので、退職金は通常の給与よりも税負担が軽くなるように設計されているという考え方があります。
「対策」と言われるものの実際
「退職金の税金対策」という言葉を見ると、何か特別な手続きや複雑な手法を想像するかもしれません。でも、多くの場合、対策として語られているのは、すでに制度として用意されている仕組みを正しく使うことを指しているという考え方があります。
たとえば、退職金を受け取る際には「退職所得の受給に関する申告書」という書類を会社に提出することが考えられます。この書類を提出すると、会社が退職所得控除を計算して、適切な税額を差し引いた金額を支払ってくれます。
もしこの書類を提出しなかった場合、退職金の20.42%が一律で源泉徴収されます。その後、確定申告をすれば正しい税額に調整されますが、一時的に多くの税金が差し引かれた状態になります。
つまり、「対策」と呼ばれているものの1つは、この申告書をきちんと提出するという、ごく基本的な手続きだったりします。
会社によっては、退職時の手続きの中で自動的に案内されることもあれば、自分から申し出る必要がある場合もあります。退職が近づいたら、人事や総務に確認しておくことをお勧めします。
複数回の退職金を受け取る場合の注意点

転職経験がある人や、複数の会社から退職金を受け取る可能性がある人は、少し注意が必要な点があります。
退職所得控除は、前回の退職金を受け取った時期によって、計算方法が変わることがあります。4年以内に複数の退職金を受け取る場合、前回使った控除額が今回の控除額から差し引かれることがあります。
たとえば、前の会社で勤続10年の退職金を受け取り、3年後に別の会社で勤続5年の退職金を受け取る場合。本来なら5年分の控除(200万円)が使えるはずですが、前回の控除額の一部が差し引かれるため、実際に使える控除額は少なくなります。
これは「短期間に複数の退職金を受け取って、控除を何度も使う」ことを防ぐための仕組みです。自分がこのケースに当てはまるかどうかは、退職の時期や勤続年数によって変わります。
確定拠出年金と退職金の関係
会社に確定拠出年金制度がある場合、退職金とは別に、年金として受け取るか一時金として受け取るかを選べることがあります。
一時金として受け取る場合、これも退職所得として扱われます。つまり、退職金と確定拠出年金の一時金を同じ年に受け取ると、両方を合算した金額に対して退職所得控除が適用されるという仕組みになっています。
もし退職金だけで退職所得控除の枠を使い切っている場合、確定拠出年金の一時金には控除が適用されず、税負担が大きくなることがあります。
一方、年金として受け取る場合は「雑所得」として扱われ、公的年金等控除が適用されます。ただし、他の年金収入と合算されるため、受け取るタイミングや金額によっては、税負担や社会保険料に影響することもあります。
どちらが有利かは、その人の状況によって変わる可能性があります。退職金の額、他の収入、年金の受給状況など、いくつもの要素が絡み合うため、一概に「こうすればいい」とは言えません。
「対策」を考える前に整理しておくこと

税金対策という言葉を見ると、何か積極的に動かなければいけないような気持ちになるかもしれません。でも実際には、まず自分の状況を整理することが先です。
- 退職金の金額はいくらか
- 勤続年数は何年か
- 過去に退職金を受け取ったことはあるか
- 確定拠出年金はあるか、ある場合どう受け取るか
- 退職後すぐに再就職するか、しばらく収入がない期間があるか
これらを確認すると、自分にとって何が必要で、何が不要かが見えてきます。
「対策」という言葉が指しているのは、特別な裏技ではなく、制度を正しく理解して、自分の状況に合った選択をすることです。そして、その選択をするために必要な情報を整理することが、最初の一歩です。
相談するかどうかも、自分のペースで決めていい
税金のことを考えていると、「専門家に相談するという選択肢もあるのか」という疑問が浮かぶかもしれません。
相談することで得られるのは、自分の状況に合わせた具体的な情報です。一般的な説明だけでは判断しきれない部分がある場合、誰かに話を聞いてもらうことで、頭の中が整理されることもあります。
ただ、相談したからといって、その場で何かを決めなければいけないわけではありません。話を聞いて、情報を持ち帰って、改めて考える。そういう使い方もあります。
逆に、自分で調べて、会社の担当者に確認して、それで十分だと感じるなら、それでいい。相談しないことが間違っているわけではありません。
- 退職金には退職所得控除があり、勤続年数に応じて税負担が軽減される仕組みがある
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、適切な税額で受け取れるという考え方があります
- 複数回の退職金や確定拠出年金との関係など、個別の状況によって注意点が変わる
- 「対策」とは特別な手法ではなく、制度を正しく理解して自分に合った選択をすること
- 相談するかどうかも含めて、自分のペースで考えていい
退職金の税金について、完璧に理解する必要はありません。まずは自分の状況を確認して、必要な情報を少しずつ集めていく。それだけで十分です。
焦って決める必要もなければ、すぐに行動しなければいけないわけでもありません。自分のペースで、必要なことを1つずつ確認していくことをお勧めします。