在宅介護を始めるとき、お金の全体像が見えなくて不安になる

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に応じた判断を代替するものではありません。介護費用は世帯の状況や利用するサービスによって大きく異なります。具体的な費用や制度の利用については、お住まいの自治体やケアマネージャーにご相談ください。
親の介護が必要になったとき、まず頭に浮かぶのは「いくらかかるんだろう」という疑問かもしれません。施設に入るよりは在宅の方が安いと聞いたことがあるけれど、実際にどんな費用がどれくらいかかるのか、具体的なイメージが湧かない。
ネットで調べても「月平均〇万円」という数字だけが出てきて、その内訳がよくわからない。自分の場合はどうなるのか、今の収入で足りるのか、何から準備すればいいのか——。
こうした「全体が見えない不安」を抱えている方は、決して少なくありません。
在宅介護の費用は「介護サービス費」と「日常生活費」に分かれる
在宅介護にかかる費用は、大きく2つに分類できます。
介護保険で使えるサービスの費用
1つ目は、介護保険制度を利用したサービスの費用です。これには以下のようなものが含まれます。
- 訪問介護(ホームヘルパー)
- 訪問看護
- デイサービス(通所介護)
- ショートステイ(短期入所)
- 福祉用具のレンタル(車いす、介護ベッドなど)
- 住宅改修費(手すりの設置、段差解消など)
これらのサービスは、介護認定を受けることで利用できます。利用者が負担するのは原則として1割(所得に応じて2割または3割)です。
たとえば、要介護2の方が訪問介護とデイサービスを組み合わせて利用した場合、1割負担で月に1万5,000円~3万円程度になることがあります。ただし、これは利用するサービスの種類や頻度によって変わります。
介護保険の対象外となる日常生活費
2つ目は、介護保険では賄えない日常的な支出です。
- おむつ代
- 介護食や栄養補助食品
- 市販の介護用品(防水シーツ、清拭タオルなど)
- 通院時の交通費
- 家事代行サービス(介護保険外)
- 介護する家族の交通費や食事代
これらは全額自己負担となります。特におむつ代は、使用頻度によって月に5,000円~1万5,000円程度かかることがあります。
介護度によって利用できるサービスの上限が決まっている

介護保険のサービスには、介護度ごとに「支給限度額」が設定されています。
- 要支援1:50,320円
- 要支援2:105,310円
- 要介護1:167,650円
- 要介護2:197,050円
- 要介護3:270,480円
- 要介護4:309,380円
- 要介護5:362,170円
この金額は、サービス費用の総額です。実際に利用者が負担するのは、この1割(または2割・3割)になります。
たとえば要介護2の方の場合、月に197,050円分までのサービスを利用でき、1割負担なら約2万円が自己負担額となります。
この限度額を超えてサービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担になります。
実際にかかる費用の平均は月4万~8万円程度
生命保険文化センターの調査によると、在宅介護にかかる費用の平均は月に約4万8,000円とされています。
ただし、これはあくまで平均値です。介護度や家族構成、利用するサービスの種類によって、実際の金額は大きく変わります。
比較的軽度の場合(要支援1~要介護1)
- 介護サービス費:5,000円~1万5,000円
- 日常生活費:1万円~2万円
- 合計:1万5,000円~3万5,000円程度
週に数回のデイサービスや、訪問介護を最小限利用するケースです。
中程度の場合(要介護2~3)
- 介護サービス費:2万円~4万円
- 日常生活費:2万円~3万円
- 合計:4万円~7万円程度
デイサービスと訪問介護を組み合わせ、福祉用具もレンタルするケースです。
重度の場合(要介護4~5)
- 介護サービス費:3万円~5万円
- 日常生活費:3万円~5万円
- 合計:6万円~10万円程度
訪問介護の頻度が高く、訪問看護も利用し、おむつなどの消耗品も多く必要なケースです。
見落としがちな「間接的な費用」も存在する

介護にかかる費用は、サービス料金や日用品だけではありません。家族が介護をするために発生する間接的な費用も、実際には大きな負担になることがあります。
仕事を調整することで減る収入
介護のために仕事の時間を減らしたり、休職したりすると、収入が減少することがあります。総務省の調査では、介護を理由に離職・転職した人は年間で約10万人に上るとされています。
介護する側の交通費や食事代
親の家に通う交通費、病院への付き添い、ケアマネージャーとの打ち合わせなど、介護に関連した移動は意外と多くなることがあります。月に数千円から1万円以上かかることもあります。
自分の健康維持のための費用
介護疲れから体調を崩し、医療費がかかるケースもあります。また、精神的な負担を軽減するためのカウンセリングや、リフレッシュのための費用も必要になることがあります。
こうした間接的な費用は、家計簿には「介護費」として現れにくいため、見落とされがちです。
費用を抑えるために使える制度がある
在宅介護の費用負担を軽減するために、いくつかの公的な支援制度が用意されています。
高額介護サービス費
同じ月に利用した介護サービスの自己負担額が一定額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
所得に応じて上限額が異なりますが、一般的な所得の世帯では月44,400円が上限となります。
医療費控除
介護サービスの一部は、確定申告で医療費控除の対象になります。訪問看護や訪問リハビリ、一部の訪問介護などが該当します。
年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合、超えた分について所得控除を受けられます。
自治体独自の助成制度
おむつ代の助成、タクシー券の配布、介護用品の支給など、自治体によって独自の支援制度があります。お住まいの市区町村の介護保険課や高齢福祉課に問い合わせると、利用できる制度を教えてもらえます。
費用の内訳を知ることで、準備の仕方が見えてくる

在宅介護の費用は「月〇万円」という一つの数字ではなく、いくつかの要素に分かれています。
介護保険で賄える部分、自己負担が必要な部分、間接的にかかる費用——。それぞれの内訳を知ることで、「どこにどれくらいのお金が必要になるのか」が少しずつ見えてきます。
すべてを一度に準備する必要はありません。まずは介護認定を受けて、ケアマネージャーと一緒にケアプランを作る中で、具体的な費用感を確認していく。そのプロセスの中で、使える制度や調整できる部分も見えてきます。
- 在宅介護の費用は「介護サービス費」と「日常生活費」に分かれる
- 介護度によって利用できるサービスの上限額が決まっている
- 平均的な費用は月4万~8万円程度だが、状況によって大きく変わる
- 高額介護サービス費や医療費控除など、負担を軽減する制度がある
- 間接的な費用(収入減少、交通費、健康維持費)も考慮する必要がある
介護について考えるタイミングや準備の進め方は、人それぞれです。
「どんな費用があるのか」を知ることが、考えを整理する材料になることもあります。あなたが自分のペースで情報を確認していくきっかけになれば幸いです。
気になることがあれば、またいつでもこのページに戻ってきてください。焦らなくて大丈夫です。
本記事で紹介した費用の目安や制度は一般的な情報です。実際の介護費用は、ご家族の状況、お住まいの地域、利用するサービスの内容によって大きく異なります。具体的な準備や制度の利用については、地域包括支援センターやケアマネージャー、自治体の窓口にご相談されることを考え方の一例します。最終的な判断は、ご自身の状況に合わせて行ってください。