保険金を請求しようと思ったとき、「どんな書類が必要なんだろう」と調べ始めて、一覧を見た瞬間に手が止まった経験はないでしょうか。診断書、領収書、事故証明書……いくつも並ぶ書類名を見て、「これ全部揃えないといけないの?」「もし足りなかったらどうなるの?」と、請求すること自体をためらってしまうことがあります。
あるいは、すでに何枚か手元にあるけれど、「これで本当に足りているのか」「書類の不備で却下されたらどうしよう」と、送る前に何度も確認してしまう。そんなふうに、請求する権利があるのに、書類のことで一歩が踏み出せずにいる状態かもしれません。
「書類が揃わない」と感じるのは特別なことではない

保険金請求の書類について不安を感じるのは、決して珍しいことではありません。保険会社の調査によれば、保険金請求をためらった理由として「必要書類がわからなかった」「書類を揃える手間が負担だった」と答えた人は約35%に上ります。
特に初めて請求する場合、保険証券に書かれた「必要書類一覧」を見ても、それが具体的に何を指しているのか、どこで入手できるのかがわからず、そこで立ち止まってしまうケースは少なくありません。
また、書類の名称が保険会社によって微妙に違うことも、混乱の一因です。ある保険会社では「診療明細書」、別の会社では「診療報酬明細書」と呼ばれていたり、同じ内容でも表現が異なることがあります。
保険金請求に必要な書類の基本的な種類
保険金請求に必要な書類は、大きく分けて3つのカテゴリーに分類できるという考え方があります。
保険会社が用意する書類
まず、保険会社側が用意する書類があります。これは請求する側が自分で探す必要はありません。
- 保険金請求書: 保険会社に連絡すると送られてくる、または公式サイトからダウンロードできる用紙
- 同意書: 医療機関への照会に必要な場合に提出する書類
これらは保険会社に「請求したい」と伝えれば、郵送またはメールで受け取れます。
医療機関で発行してもらう書類
次に、病院やクリニックで発行してもらう書類です。
- 診断書: 医師が病名や治療内容を記載した書類(発行費用は3,000円〜10,000円程度)
- 診療明細書: 治療内容と費用の詳細が記載された書類
- 領収書: 実際に支払った医療費の証明
診断書は有料ですが、診療明細書や領収書は通常、窓口で無料または少額で発行してもらえます。
自分で用意する書類
最後に、自分で準備する書類があります。
- 本人確認書類: 運転免許証やマイナンバーカードのコピー
- 振込先口座の情報: 通帳のコピーやキャッシュカードの写し
- 事故証明書: 交通事故の場合、警察署や自動車安全運転センターで取得
これらは普段から手元にあるものか、公的機関で取得できるものです。
入院・手術・通院・がん診断など、請求する保険金の種類によって必要な書類は異なります。すべての書類が毎回必要になるわけではありません。
「全部揃えないと請求できない」わけではない

書類について最も誤解されやすいのが、「すべて完璧に揃えてから送らないといけない」という思い込みです。
実際には、保険会社の多くは「まず請求書だけでも送ってください」というスタンスをとっています。請求書を受け取った後、担当者から「この場合は診断書が必要です」「領収書だけで大丈夫です」と、具体的に何が必要かを教えてもらえるケースが一般的です。
また、書類に不備があった場合も、その場で却下されるわけではありません。保険会社から「この部分を追加してください」「この書類を再提出してください」と連絡が来るので、そこで対応すれば問題ありません。
請求する権利があるのに、書類の不安だけで諦める必要はないという考え方があります。
書類を揃えるときの実際の流れ
実際に書類を準備するときの流れは、次のようになることが一般的です。
最初にすることは、保険証券に記載された連絡先に電話やウェブで連絡することです。このとき伝えるのは「いつ、どんな理由で保険金を請求したいか」という概要だけで構いません。担当者が「では、この書類とこの書類をお願いします」と具体的に教えてくれることが多いです。
保険会社から、あなたのケースで必要な書類の一覧が送られてきます。このリストには、どこで入手できるか、費用はどのくらいかも記載されていることが多いです。
すべてを一度に揃える必要はありません。手元にあるもの、すぐに取得できるものから順番に準備していくという方法があります。診断書のように発行に1週間程度かかるものもあるので、時間がかかる書類は早めに依頼しておくと安心です。
保険会社によっては、揃った書類から先に送ることを認めているところもあります。「全部揃ってから」と思い込まず、担当者に「これから順次送ってもいいですか」と確認してみるのも一つの方法です。
診断書や領収書には発行日から3ヶ月や6ヶ月といった有効期限が設定されている場合があります。古い書類を使う場合は、事前に保険会社に確認しておくことをお勧めします。
書類が揃わないときの選択肢

どうしても書類が揃わない場合、いくつかの選択肢があります。
代替書類で対応できる場合がある
診断書が高額で負担に感じる場合、保険会社によっては「診療明細書で代用可能」としているケースもあります。請求額が50,000円以下の場合は簡易な書類でよい、といった基準を設けている保険会社もあります。
分割して請求する
たとえば入院と通院で分けて請求する、手術給付金だけ先に請求するなど、揃っている書類で対応できる部分から進めることも可能です。
担当者に相談する
「この書類が手に入らない」「費用が負担」といった事情は、担当者に正直に伝えて構いません。代替手段や、費用負担を軽減する方法を提案してもらえることもあります。
書類のことで迷ったら、整理だけでもしてみる
書類を揃えることに不安を感じているとき、「今すぐ全部揃えなければ」と焦る必要はありません。請求する・しないの判断も、今この瞬間に決めなくてよいことです。
ただ、もし「何も決めないまま放置している状態が不安」と感じるなら、一度、自分の状況を整理してみるという選択肢もあります。どんな書類が必要で、どれが手元にあって、どれが足りないのか。それを確認するだけでも、次に何をすればいいかが見えてくることがあります。
話を聞くことと、実際に請求することは別です。情報を整理した結果、「やっぱり今じゃない」と思えば、そのまま保留にしても構いません。
自分のペースで進めていい

保険金請求は、決められた期限内であれば、自分のペースで進めるという選択肢があります。書類を揃えるのに時間がかかっても、それで請求権がなくなるわけではありません。
「完璧に揃えてから」と思うと動けなくなることもありますが、「わかる範囲で少しずつ」と考えれば、最初の一歩は意外と軽いものです。
- 保険金請求に必要な書類は、請求内容によって異なる
- すべてを完璧に揃えてから送る必要はなく、不備があれば保険会社から連絡が来る
- 書類が揃わない場合は、代替書類や分割請求といった選択肢もある
- まずは保険会社に連絡して、自分のケースで何が必要かを確認することから始められる
- 請求するかどうかは、情報を整理した後で決めても遅くない
書類のことで迷っているなら、それは「請求してはいけない」というサインではなく、ただ「もう少し情報が欲しい」という状態なのかもしれません。ご自身のペースで、納得できるまで確認する時間を持つことをお勧めします。